第6回『深夜勤務と健康経営』

深夜勤務と健康経営

第6回:2019年11月18日更新

 

著:川島孝一
(川島経営労務管理事務所所長、(有)アチーブコンサルティング代表取締役、
(有)人事・労務チーフコンサルタント、社会保険労務士)


24時間営業の店舗など、深夜の時間帯にサービスを提供している会社は数多くあります。
また、最近ではIT業界で深夜の監視業務などのサービスに従事する業務も増えているようです。
私たち消費者側からの視点で考えれば、24時間営業の店舗は「困ったときにいつでも利用できる」ので、大変便利でありがたいことです。
しかし、そこで働いている労働者の視点に立つと、睡眠不足による慢性疲労等の問題が存在していることが想像できます。

今回は、深夜業を行う上での注意点と労働安全衛生法に定める深夜業の健康診断について紹介していきます。

 

<深夜業を行う上での注意点>

厚生労働省生活習慣病予防のための健康情報サイトによると、「生物は地球の自転による24時間周期の昼夜変化に同調して、ほぼ1日の周期で体内環境を積極的に変化させる機能を持っており、人間においても体温やホルモン分泌などからだの基本的な機能は約24時間のリズムを示す」そうです。
簡単に言うと、人間は明るい昼の時間に活動をして、暗くなる夜には休息する必要があるということです。
夜勤は、休息が必要な時間に活動をするので、本来のサイクルから外れています。
そのため、日中に十分睡眠をとったとしても、身体が十分には回復しない場合があります。

また、夜勤を続けることによって高血圧症、心疾患、糖尿病、乳がん、前立腺がん等の発症リスクが高まるとも言われています。
このようなリスクが認識されていたとしても、病院のように業種によっては24時間体制をとらざるを得ないこともあります。

夜勤に対するガイドライン(ルーテンフランツ9原則)は、日本国内だけではなく国際的に利用されている基準です。
深夜業を行う方が健康に対して自ら注意するだけでなく、会社としても疲労を蓄積させない体制を整えていくことが大切です。

ガイドラインを見ながら、シフトの組み方などで改善できる点がないか検討していった方がよいでしょう。
また、働き方改革法の一環で施行された「勤務間インターバル」の導入をすることで、疲労の緩和を期待することもできます。

①連続夜勤は避ける

②日勤開始時刻は早くしない

③シフト交代時刻は個人に融通性を持たせる

④夜勤は他の勤務より短くすべき

⑤短い勤務間隔は避ける

⑥連続勤務を行う場合は少なくとも2連続休日の週末を含むべき

⑦連続勤務は時計回りの正循環にする

⑧勤務開始から休日までの1周期は長くしない

⑨シフトの循環は規則正しく

 

<特定業務に対する健康診断>

労働安全衛生法では、雇い入れ時のほか、毎年1回健康診断を行うことになっています。
しかし、特定業務に従事する労働者に対しては、「その業務への配置替えしたとき」と「6ヶ月に一度」健康診断を行なうことが求められています。

この特定業務の中には「深夜業に従事する労働者」も含まれています。
労働安全衛生法の深夜業とは、基本的には労働契約の内容に深夜業が含まれているかどうかで判断します。
たとえば、通常は朝から夕方までの勤務をしている従業員が、たまたまイレギュラーな業務で深夜の勤務をする場合は、労働安全衛生法の深夜業に従事する労働者には含まれません。

しかし、コンビニエンスストアの業務で、1週間の中で月曜日は深夜勤務、それ以外は日中の勤務といった雇用契約になっている場合は、特定業務に該当します。
曜日で限定していなくても、深夜にも勤務があるシフト制である場合も同じです。

「深夜業の回数や頻度は関係ない」という点に注意しましょう。

特定業務に従事する労働者の健康診断の検査項目は、以下のとおりです。

①既往歴と業務歴の調査

②自覚症状と他覚症状の有無の検査

③身長、体重、腹囲、視力、聴力の検査

④胸部エックス線検査と喀痰検査

⑤血圧の測定

⑥貧血検査(血色素量と赤血球数)

⑦肝機能検査(GOT、GPT、γ‐GTP)

⑧血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)

⑨血糖検査

⑩尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)

⑪心電図検査


深夜勤務は、人間本来のリズムからは外れていることは間違いありません。
しかし、深夜勤務が必要な業種もたくさんあります。
法律で定められている通りの運用をするだけでなく、少しでも健康リスクが低減されるように、シフトの組み方をはじめ社内体制を整えていくことが健康経営を進めるうえで重要になります。

 

※コラム記事は執筆者の個人的見解であり、オムロンヘルスケア株式会社の公式見解を示すものではありません。


著者プロフィール(川島孝一氏)

川島経営労務管理事務所所長、(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサルタント、社会保険労務士。
早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事・管理業務に従事後、現職。人事制度、賃金制度、退職金制度をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを主に行い、労務リスクの低減や経営者の視点に立ったわかりやすく、論理的な手法に定評がある。
著書に「中小企業の退職金の見直し・設計・運用の実務」(セルバ出版)、「労務トラブル防止法の実務」(セルバ出版)、「給与計算の事務がしっかりできる本」(かんき出版)など。