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【連携事例】神奈川県庁「超高齢社会目前、世界に先駆けて神奈川県庁が取り組む未病政策とは」

(右から神奈川県庁 政策局 ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室 ヘルスケアICT担当課長 小泉純一様、主査 上野哲也様)

■ 神奈川県庁(〒231-8588 神奈川県横浜市日本大通1)

取材先:政策局 ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室 ヘルスケアICT担当課長 小泉純一様、主査 上野哲也様

対象 :マイME-BYOカルテ(まいみびょうかるて)

 

<マイME-BYOカルテとは?>

体重・歩数など日々の記録やお薬、母子健康手帳、健診結果などを一覧で管理できるアプリ。

自身や家族の大切な健康情報をアプリに記録することで、災害時などの緊急時にすぐに確認できるため、安心して支援を受けることができる。また、県や住んでいる市町村の健康に関する情報などが対象者に配信される。

OMRON connectとの連携によって、オムロンヘルスケアの血圧計や体重体組成計、活動量計で測定した血圧・体重・歩数などの健康データを、「マイME-BYOカルテ」に自動で記録することができるようになった。(2018年7月)

 

 

 

■超高齢社会に対して、どこよりも早く対策を進めている神奈川県

2018年9月、総務省は総人口に対し、65歳以上の高齢者が約28%となったことを発表した。また、団塊の世代が75歳以上になる2025年に迎える超高齢社会に向かう今、医療や介護面では、より深刻な社会問題が発生する事が懸念されている。この超高齢社会問題は、日本のみならず、世界中で見受けられる問題であり、各国、各機関では様々な方策が検討されている。

そのような中、神奈川県では、県知事である黒岩 裕治氏の「いのち輝くマグネット神奈川」という理念の下、どの地域よりもいち早く対策に取り組んできた。暮らしの安全や安心、子どもたちの教育の在り方、産業の振興など、幅広い分野へ手を伸ばす中、医療・健康面への政策も打ち出している。

具体的には食・運動・社会参加による「未病の改善」と、「最先端医療・最新技術の追求」という二つのアプローチを融合させた「ヘルスケア・ニューフロンティア」政策として、だれもが健康で長生きできる社会を目指して歩んでいる。

神奈川県政策局ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室ヘルスケアICT担当課長 小泉 純一氏はこの政策について次のように語っている。

「神奈川県に限らず、全国的に見て超高齢社会に直面しています。特に神奈川県の場合、これから加速度的に高齢化が進んでいくという状況があります。これに対しては、これまで取ってきた手法では解決策にはならないだろうというのが知事の考えです。その中で、神奈川県では、最先端医療・最新技術と、未病の改善という二つのアプローチを融合させたヘルスケア・ニューフロンティア政策を、実際に行っています。これが超高齢社会への神奈川県としてのアプローチの仕方となります。その中で、個人の生涯にわたる健康データを収集・蓄積していく、ヘルスケアICTという施策を進め、『マイME-BYO(みびょう)カルテ』を開発しました。」

 

■生涯にわたる健康情報を一元管理、120万人が利用する「マイME-BYOカルテ」

「マイME-BYOカルテ」は、生まれてからの様々な健康情報を一覧化できる点が特長だ。母子健康手帳の情報を始め、就学後の健診結果や、お薬情報、一日の歩数などを管理できるようになっている。データの登録にかかる手間は、極力軽減する仕組みが取り入れられている。例えば、お薬情報を自分で入力すると言えば面倒に感じるが、各薬局によってQRコードが発行されるようになっており、アプリからQRコードを読み込むだけでお薬が登録できる。また、一部の電子母子手帳アプリと連携させれば子どもの情報を、「ヘルスケア」(iOS)や「Google Fit」(Android)と連携させれば歩数が自動で記載されるようになっている。また、ただ記録するだけでなく、在住する市町村や年齢に合わせた情報も配信されており、単なるライフログアプリとは異なった、県民個人に寄り添ったアプリになっている。

こういったアプリを自治体が提供するケースは珍しく、この面でも神奈川県は最先端を走っていると言える。機能面で言えば県民でなくとも利用したい機能が多く、実際、同アプリの利用者は県外にもおよび、現在、LINEを通じて登録したユーザーなど、120万人が利用しているという。利用者からは評価する声と共に機能について要望も届いており、反応も上々のようだ。神奈川県 政策局 ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室 ヘルスケアICTグループ主査 上野哲也氏はアプリについてこう語る。

「基本的には母子手帳やお薬手帳など、まずは紙で管理することを大切にして頂くことに変わりはありません。ただ、過去の震災の際に、お薬手帳などが流されてしまったことで具体的な薬の名前が解らず困ったという事例を参考にして、災害時にも安心して支援を受けていただけるという観点からも、行政の取り組みとしてこのアプリを提供しています。データは県庁でバックアップ含めて管理しているのが安心につながるのかなと考えています。災害時にだけでなく、平時から本人や家族の健康情報を把握・管理することで、未病を意識し、より健康へ向かって個人が主体的に行動を変えて行って欲しいと考えています。」

 

■OMRON connectとの連携で記録項目が増加、より健康を意識できるように

2018年7月、「マイME-BYOカルテ」は新たな機能として、オムロンヘルスケアの血圧計、体重体組成計、活動量計をアプリに取り組むべく、OMRON connectと連携させた。計測機器の中でもオムロンヘルスケアを選択した理由は、一般家庭での普及率が高く、また、アプリとも連携できるという点を評価したという。利用者からはデータの取り込みがスムーズで、意識せずにできるという声が上がっており、ユーザーに負担をかけない形で利用が進んでいる。

開発面で言えば、同アプリはすでに、ヘルスケアやGoogle Fitと連携させており、すでに両アプリと連携されているOMRON connectの導入は容易だったという。開発時のことを上野氏はこう振り返る。

「民間企業に比べ、行政の取組の場合、年度単位での予算の確保の問題もあり、改修が簡単にできず、臨機応変な対応は難しくなります。そのような中、OMRON connectは、工数も少なく連携することができ、また、すでに普及が進んでいる機器と連携できるというのがありがたかった点です。今後、より連携できる機器が増えていくことと、OSによって連携できる項目が限られているので、連携できる情報の項目がより幅広くなっていくとありがたいなと考えています。」

 

■個人が健康を意識し、より健康に、より暮らしやすい未来へ

最後に、神奈川県の未病への取り組みと「マイME-BYOカルテ」がどう発展していくのかを聞いてみたところ、その展望について上野氏はこう語ってくれた。

「このアプリで集めたデータを分析して、有効活用していくことは当然視野に入れていますが、まずは普及させていくところを中心にしていきたいと考えています。より使いやすくしていくこともそうですが、県が単独で行っていくというより、市町村や民間企業とも連携を図りながら、日常生活の中で使われていくアプリにし、かつ、自身の身体の状態を把握して行動を変えていくのに使われるアプリにしていきたいなと考えています。」

神奈川県では今後、住民が集まりやすい場所へオムロンヘルスケアの機器を設置し、より多くの県民が気軽に利用できるようにすることも検討しているようだ。

「マイME-BYOカルテ」を中心とした未病への神奈川県の取り組みに今後も目が離せない。

(左から神奈川県庁 政策局 ヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室 主査 上野哲也様、課長 小泉純一様、オムロンヘルスケア 松田高明、山新真人)