「健康経営を学ぶ」第4回:「健康投資ワーキンググループ( 2023健康経営度調査の変更点 )」

718日に健康経営の推進を担当している経済産業省の、健康・医療新産業協議会内の第9回健康投資ワーキンググループが開催されましたので内容を紹介します。

 今回の主となる議題は2023年度の健康経営度調査の改定となります。前回でご紹介した内容より多岐にわたりまた具体的な設問案もありましたので、下記に3点紹介します。

 

資料2 事務局説明資料 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/009_02_00.pdf

  1. 情報開示の推進
    1-1特定健診・保健指導の実施率の評価 【大規模】
    →特定健康診査実施率(%)と特定保健指導実施率(%)の開示
    1-2業務パフォーマンス指標の開示 【大規模(必須)】
    →業務パフォーマンス指標であるaプレゼンティーイズムとbアブセンティーズム,cワークエンゲージメントの結果と測定方法について開示し,さらに測定範囲・回答率についてもHP等で開示しているか確認
    1-3労働安全衛生に関する開示 【大規模】
    →労働安全衛生managementシステム(ISO)導入や安全衛生委員会等の開催を問う
  1. 社会課題への対応
    2―1仕事と育児・介護の両立支援 【大規模(認定要件)・中小規模(認定要件ではなくアンケート)】
    →法定を超えた取り組みとして,育児と介護それぞれについて,補助や費用を出しているか,社内制度があるかどうかを問う
    2-2女性特有の健康課題 【大規模・中小規模(認定要件)】
    →関連施策への参加状況を開示しているかどうかを評価の対象とし,取り組み状況がありかつ(&)具体的な取り組みを問う。
    2―3生産性低下防止のための取組 【大規模・中小規模】
    →生産性低下防止のための取組として、新たに、「花粉症」及び「眼精疲労」に対する具体的な支援の設問を追加
  1. 健康経営の国際展開
    3-1新型コロナウイルス感染症への対応 【大規模・中小規模】
    →5類感染症への移行を踏まえ、インフルエンザ等を含む感染症対策を問う設問へ統合
    3―2海外従業員への対応 【大規模(評価対象ではない)】
    →健康経営の国際展開(2024年のISO国際標準化等を見据え)の検討のため、海外駐在員や、現地法人で雇用されている社員の健康増進、健康課題への対応等を把握するため、新たに設問を設ける。(評価には用いない)

  調査表では、認定要件の追加や評価に用いられないアンケート調査で対応する設問があり、大きく7項目が変更されました。例年に比べると変更点が多く、前回の第8回健康投資ワーキンググループで紹介されていない内容(1-1,2-3,3-2等)もありましたので、取り組む企業で対応が必要なケースが多々ありそうです。

また健康経営のチームや座組が、人事部や総務部、産業保健スタッフ、保険組合、経営企画、労働組合、広報IR等でなりたっていれば問題ないのですが、ある1つまたは2つの部署や部門に偏っているようであれば、対応に困難を極めると予測されます。さらに、健康データが多数ありますので、上記メンバーの他にデータアナリスト等の分析担当者(データの利活用のため)、ヘルスケア事業部や新規事業部、さらにグループ会社や取引先の等の健康経営推進者等も巻き込んでおけるとよいでしょう。詳細は、「最強戦略としての健康経営」(本)を参照ください。

調査票の素案は下記となります。ぜひご覧ください。

・参考資料令和5年度健康経営度調査票(素案)提出期限:20231013日(金)17時まで ※大規模法人

    https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/009_s02_00.pdf

・参考資料健康経営優良法人2024(中小規模法人)認定申請書(素案)提出期限:20231020日(金)17

    https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/009_s04_00.pdf

次に、認定要件案は下記となります。P17が大規模法人部門、P18が中小規模法人部門。

    https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/009_02_00.pdf

※(青)ブルーが主な変更点となります。

  その他に、中小企業への普及拡大としてブライト500申請法人について結果のフィードバックを行い、都道府県代表(各都道府県のブライト500認定法人の中で一番順位が高い法人)や、業種別(ブライト500認定法人のうち、業種別順位が高い法人)、従業員規模別(ブライト500認定法人のうち、20人未満と50人未満の事業者の中で、順位が高い法人)、評価の上昇度(ブライト500認定法人のうち、当該年度に得点が急上昇した法人)等それぞれを表彰する案も出てきており、従来のブライド500という認定制度に加え、新たな表彰となりそうです。

  最後に、健康経営の目指すべき姿として、下記ページが新たに追加されましたので紹介します。

従来の右上に伸びる「健康経営の期待される効果(企業への効果と社会への効果)」に年代を入れた新たな図となっています。ワードとしては「家族などのヘルスリテラシー向上」、「レジリエンスの向上」、「スタークホルダーからの信頼」、「労働力人口増加」、「経済成長」、「健康寿命の延伸」等が追加されています。面白いところだと「労働力人口増加」が掲げられている点です。読者の皆様もご存じの通り、労働力人口(15歳以上の人口のうち、就業者と就労意欲のある失業者を合算した人口)は1998年をピークに緩やかに減少しています。

国土交通省白書 https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h14/H14/html/E1023112.html

気を付ける点は生産年齢人口(15歳以上65歳未満の年齢層の人口)ではないということです。ご存じの通り65歳以上で働いている人も増え続け、生涯現役社会が実現するのであれば、65歳できってしまう生産年齢人口ではなく労働力人口の方が、日本における労働者を正確に把握できているように思います。また健康経営の両立支援やメンタルヘルス対策を、多くの企業が取り組めば、企業等の定年延長と重なり、労働力人口増加の一助になれるかもしれません。そんな期待を健康経営では抱かせてくれると推察されました。

いかがでしたでしょうか? 8月末から2023の健康経営度調査の回答が始まります。ぜひ素案を中心にご確認いただき、今後の健康経営の取り組みの参考にしてみてください。

※コラム記事は執筆者の個人的見解であり、オムロン ヘルスケア株式会社の公式見解を示すものではありません。
※ 健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。