「健康経営を学ぶ」第3回:「健康経営ワーキンググループ(1年の総括と次回健康経営度調査への変更点)」

3月に経済産業省等の顕彰制度の発表があり,4月には,「中小規模法人部門 取り組み事例集(健康経営優良法人2023)」( https://kenko-keiei.jp/1032/ )と「健康経営銘柄2023 選定企業紹介レポート」( https://kenko-keiei.jp/ )が公表されました。

中小規模法人部門の取り組み事例集は,毎年公開されているもので,今年は「健康意識の向上・企業風土の変化 」,「職場の生産性向上」,「人材の採用・定着」,「企業業績の向上」の4つのカテゴリーで紹介されています.また銘柄選定企業紹介レポートも毎年公開されており,今年は特徴的な写真や戦略マップ等の図で紹介されています.QRコードが付いていますので詳細は企業サイトで見られるようになっています.ぜひ最新の取り組みをご覧ください.

 さて,今回から健康経営の推進を担当している経済産業省の、健康・医療新産業協議会 健康投資ワーキンググループ( https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/index.html )の内容を紹介していきます.

健康・医療新産業協議会 健康投資ワーキンググループは年3回(3月,7月,12月)開催しています。理由は3月に顕彰制度発表があるため1年の総括と次回健康経営度調査への変更点等の開示&周知,7月には8月から健康経営度調査の回答が始まるため今年度の健康経営顕彰制度の最終形の紹介,12月には健康経営度調査の企業へのフィードバックと併せ今年度の応募者数の進捗と今後の方向性について,議論が行われています.

また厚生労働省から参考資料が提供されており,その他に委員や健康経営優良法人認定事務局の日本経済新聞からタイムリーな話題の資料が提示されています.ぜひ一度ご確認ください.

さて,3月の第8回では,経済産業省 商務・サービスグループヘルスケア産業課の事務局資料として特徴を下記3点、紹介します.

①健康経営度調査フィードバックシート(評価結果)の一括開示

3年前から始まった表題の開示ですが,今年は38日に、令和5年の大規模法人部門の2,238法人分(前年度比+238)が,健康経営優良法人認定事務局ポータルサイトである「ACTION健康経営( https://kenko-keiei.jp/ )」で, Excelにて一括開示されました.そこで,総合評価の高い順にソートを掛けた上場企業のランキング(110位)は下記となります.

 2023 大規模法人部門 健康経営度調査フィードバック総合ランキング

総合評価証券コード法人名業種
1009202ANAホールディングス株式会社空運業
2004461第一工業製薬株式会社化学
3009719SCSK株式会社情報・通信業
4009502中部電力株式会社電気・ガス業
5009201日本航空株式会社空運業
6004432ウイングアーク1st株式会社情報・通信業
7008604野村ホールディングス株式会社証券、商品先物取引業
8008766東京海上ホールディングス株式会社保険業
9004902コニカミノルタ株式会社電気機器
10004901富士フイルムホールディングス株式会社化学

ACTION健康経営 健康経営優良法人2023 一覧( https://kenko-keiei.jp/1042/ )から筆者作成

業種としてみると空運業と情報・通信業の2社入っていますので,製造業で主に取り組まれている安全衛生だけでなく健康増進にもしっかりと取り組んでいることが伺えます.ぜひ様々な項目で調べることができるようになっていますので,ダウンロードしてみてください.

②健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)の都道府県別の認定数

こちらも例年公開していますが,昨年度から令和3年の経済産業省補助事業先に選定されている日本経済新聞社が中心となり,「健康経営®の入門編!ACTION!セミナー」と題し,札幌市,長崎県,岐阜県でセミナーが開催されています。さらに,地方TVとして,2023年から、テレビ北海道( https://youtu.be/vpu17KDho7s ),テレビ愛知( https://youtu.be/QOQusNqFWH0 )TVQ九州放送( https://youtu.be/tHLqnJGESzc )で,健康経営の特番が放送されていました.また「ACTION健康経営」の「地域の取り組み」( https://kenko-keiei.jp/chiiki/ )によると,すべての都道府県において健康経営の支援が行われており.成果として.都道府県の健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)の認定数は表2のとおりになりました.

2 健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)の都道府県別の認定数 ( )内は前年からの増減率

都道府県認定数都道府県認定数都道府県認定数
北海道461(110)青森県125(102)岩手県117(108)
宮城県349(131)秋田県130(107)山形県277(144)
福島県249(97)茨城県172(156)栃木県155(108)
群馬県247(109)埼玉県267(107)千葉県242(111)
東京都893(128)神奈川県345(122)新潟県227(123)
富山県87(110)石川県143(94)福井県119(129)
山梨県90(115)長野県484(112)岐阜県284(127)
静岡県482(111)愛知県1647(125)三重県273(116)
滋賀県185(121)京都府294(105)大阪府1831(107)
兵庫県650(104)奈良県135(116)和歌山県87(99)
鳥取県86(119)島根県142(106)岡山県466(105)
広島県400(141)山口県141(118)徳島県118(124)
香川県155(119)愛媛県149(97)高知県116(99)
福岡県348(127)佐賀県75(94)長崎県107(107)
熊本県214(113)大分県89(100)宮崎県85(105)
鹿児島県199(122)沖縄県75(160)

※経済産業省 第8回健康投資ワーキング資料 資料2事務局資料( https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_02_00.pdf P7から筆者作成

認定数でみると202212,255→202314,012件の14%(1757件)の増加となり,多くの都道府県で順調に増えていることが伺えました.ただ総務省と経済産業省による令和3年の経済センサス活動調査では,中小企業は約178万社となっており,1%弱となっており上場企業や大企業に比べると中小規模法人での浸透は遅いとも言えます.

③来年度に向けて健康経営度調査の改定3点

  • Ⅰアブセンティーズム(心身の体調不良が原因による遅刻や早退、就労が困難な欠勤、休職など、業務自体が行えない状態),Ⅱプレゼンティーイズム(出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題が作用して、パフォーマンスが上がらない状態),Ⅲワークエンゲイジメントの評価対象化

今年までは評価対象ではない参考設問で手法や数値を聞いていましたが,次年度からは評価の対象となるようです.すでに,健康経営度調査に回答している企業はサーベイ等で数字を集めていますが,初めて取り組む企業からみるとハードルが高いと感じるかもしれません.しかし、3点とも無料で使える設問も多数ありますので,試しに取得してみましょう.詳細は著書「最強戦略としての健康経営:競争優位とサステナビリティを生む人的資本のためのビジネスモデル」(  https://amzn.asia/d/jfCvJaR )をご覧ください.

  • 労働安全衛生に関する開示

従来、経済産業省では,健康経営は安全衛生ではなく,企業戦略として取り組むのを推奨してきました.今回は政府主導で人的資本経営(人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方の)が進んでいる中,開示項目を揃えるため労働災害の件数(人数),度数率(100万延実労働時間あたりの労働災害による死傷者数,強度率(100万延労働時間当たりの労働損失日数)が追加で示されています.

  • 育児・介護の両立支援

従来は健康経営の項目の対象にはなっていませんでしたが,「健康」に家族の心配なく(メンタル含め)元気に働くという観点があると捉えると,女性のM字カーブ(女性の労働力比率をグラフにした場合に、20代後半から40代前半にかけて離職して就業していない状況を意味)の解消や超高齢化社会の到来で今後も更に懸念される介護離職に対して,社会情勢の変化に対応し,健康経営が新たにカバーする項目と判断されたようです.具体的には,育児・介護における研修や勤務制度,金銭補助があげられています.また男性の育休の取得促進についても触れられており,育児介護休業法の改正等の動きを反映しています.

他に,経済産業省ヘルスケア産業課では,ヘルスケア産業の創出を担っているため,健康経営関連サービスの創出も目指し,現在使っている外部サービスを等設問(評価対象無し)も紹介されています. 

いかがでしたでしょうか?過去のワーキング資料も併せてご覧いただくと,健康経営度調査の経過も分かるかと思います.今後の健康経営の取り組みの参考にしてみてください.

※コラム記事は執筆者の個人的見解であり、オムロン ヘルスケア株式会社の公式見解を示すものではありません。
※ 健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。