第2回『健康経営銘柄と健康経営優良法人』

健康経営銘柄と健康経営優良法人

第2回:2019年6月14日更新

 

著:川島孝一
(川島経営労務管理事務所所長、(有)アチーブコンサルティング代表取締役、
   (有)人事・労務チーフコンサルタント、社会保険労務士)

 


  前回のコラムでは、健康経営と健康投資の基本的な考え方について説明しました。今回は、健康経営を行っている企業に対して認定される2つの制度を中心に見ていきたいと思います。

  今回の内容は、健康経営の定義を理解していないと判りにくいものになってしまうため、前回のおさらいをしてから「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」について説明したいと思います。

 

<健康経営の定義>

  健康経営について、国は以下のように定義をしています。

健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性等を高める投資(健康投資)であるとの考えのもと、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること。

  会社が従業員に「健康で日々生活できるのは素晴らしいことなので、健康の維持増進を図ってください」と伝えるだけでは、健康経営とは言えません。
健康経営は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践していく必要があり、『将来的に収益性を高める投資』という考えを持たなければなりません。健康投資を行うことで、従業員の活力向上や生産性の向上といった組織の活性化がもたらされ、結果的に業績向上や株価向上につなげるのが本来の意味の「健康経営」です。

 

<健康経営銘柄と健康経営優良法人>

  国は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を適切に評価される仕組み作りをしています。それが「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」です。

  健康経営銘柄とは、平成26年度から経済産業省と東京証券取引所が共同で行っています。健康経営を行っている企業を「健康経営銘柄」として選定し、公表することにより、企業の健康経営の取り組みを株式市場等において、適切に評価しようとする仕組みです。
東京証券取引所の上場企業33業種から、経済産業省と東京証券取引所が共同で各業種につき原則1社ずつを選定しています。「健康経営銘柄2019」では、28業種37社が選定されました。

  次に、健康経営優良法人について見ていきます。健康経営銘柄は、上場している企業でなければ選定されることはありません。そこで、国は、健康経営にかかる各種顕彰制度として、平成28年度に「健康経営優良法人認定制度」という仕組みを作りました。
健康経営優良法人制度とは、地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議(※)が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度です。
カテゴリーは、大規模法人部門と中小規模法人部門の2種類があります。認定基準等については、次回詳しく見ていきますので、今回は「会社の規模に応じた認定制度が存在する」という点を押さえておいてください。
今年の「健康経営優良法人2019」は、「大規模法人部門」が821法人、「中小規模法人部門」で2503法人が認定されました。「健康経営優良法人」に認定されると、求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的な評価を受けることが期待できます。

※日本健康会議とは、少子高齢化が急速に進展する日本において、国民一人ひとりの健康寿命延伸と適正な医療について、民間組織が連携し行政の全面的な支援のもと実効的な活動を行うために組織された活動体です。経済団体、医療団体、保険者などの民間組織や自治体が連携し、職場、地域で具体的な対応策を実現していくことを目的としています。

  今回は、健康経営を行っている企業に対する認定制度の概要について紹介をしてきました。健康経営は、従業員の健康を維持増進するだけが目的ではありません。それを行うために、企業が戦略的に実践することが重要です。
昨今では、どの業界でも人材不足が深刻になっています。人材を募集する際に、従業員に対する健康増進への取り組み等をアピールするのも、健康経営のひとつと言えるでしょう。

 

※コラム記事は執筆者の個人的見解であり、オムロンヘルスケア株式会社の公式見解を示すものではありません。


著者プロフィール(川島孝一氏)

川島経営労務管理事務所所長、(有)アチーブコンサルティング代表取締役、(有)人事・労務チーフコンサルタント、社会保険労務士。
早稲田大学理工学部卒業後、サービス業にて人事・管理業務に従事後、現職。人事制度、賃金制度、退職金制度をはじめとする人事・労務の総合コンサルティングを主に行い、労務リスクの低減や経営者の視点に立ったわかりやすく、論理的な手法に定評がある。
著書に「中小企業の退職金の見直し・設計・運用の実務」(セルバ出版)、「労務トラブル防止法の実務」(セルバ出版)、「給与計算の事務がしっかりできる本」(かんき出版)など。